【W.W.のAgora Mesmo第4回】第29回プレミオ・ダ・ムジカ・ブラジレイラ所感【ブラジル音楽賞】

【W.W.のAgora Mesmo第4回】第29回プレミオ・ダ・ムジカ・ブラジレイラ所感【ブラジル音楽賞】

ライタープロフィール

Willie Whopper:Jornal Cordel初代編集長、現・顧問。ブラジル音楽愛好家。2006年東京・西荻窪にブラジル情報発信スペース「Aparecida」開店。2011年9月、第1回ブラジリアン・プレス・アワード音楽部門受賞。2011,13,14,17年に駐日ブラジル大使館で、18年にはブラジル・サンパウロでもブラジル音楽についての講演を行う。これまでブラジル音楽に関する著書を6冊出版。
サイト:Barzinho Aparecida

1960年代中期頃より大ブームとなった音楽フェスティヴァル。

音楽フェスティヴァルはエリス・レジーナ、シコ・ブアルキ、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ミルトン・ナシメントといったブラジル音楽界の大物達を発掘、世に出してきました。

foto: diario catarinense

近年は音楽スタイルの多様化やブラジル国内の不況などもあり往年ほどの勢いはありませんが、その年のブラジル音楽界の流れを掴む目安となっており、アーティスト達、特に新人にとって賞を獲得することは今後の活動にも大きな影響を与えるのでひとつの目標となっています。

このPrêmio da Música Brasileira(プレミオ・ダ・ムジカ・ブラジレイラ)は1987年にプレミオ・シャープとしてスタート、中断した年もありましたが、芸能雑誌のCarasや携帯電話のTIMなどがスポンサーとなり、2009年からはブラジル最大手企業のペトロブラスの冠が付き、現在は最も権威あるフェスティヴァルとして認知されています。

(1988年、第1回Prêmio Sharpの様子)

また毎年1人の偉大なアーティストが選ばれオメナージェン(トリビュート)するのもこのフェスティヴァルの特色です。

ちなみに第1回はヴィニシウス・ヂ・モラエス、本年は昨年惜しくも亡くなったルイス・メロヂアのオメナージェンでした。

授賞式はリオデジャネイロのシネランヂアにある劇場、Theatro Municipal(テアトロ・ムニシパル)で開催、TVグローボ参下のカナル・ブラジルやYouTubeで生中継され、後日ライブ収録されたCDとDVDがリリースされるのも恒例となっています。


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さて、このプレミオですが、事前に各カテゴリーから3組のノミネートが選出されています。これはアントニオ・カルロス・ミゲルやズーザ・オーメン・ヂ・メロといった著名な音楽評論家等の投票で決められています。政治的や地域的なものもあるようですが、まあ客観的に選出されているといえるでしょう。

それでは、今年で29回目を迎えたプレミオをみていきましょう。36もカテゴリーがあるので、幾つかピックアップしていきます。

エレクトロ・ミュージック・アルバム賞を獲得したJoão Donato(ジョアン・ドナート)とDonatinho(ドナチーニョ)親子。日本ではレコードがプレスされ話題になりました。

デュオ部門では結成40周年を越えたシタンジーニョ&ショロローが獲得。ショロローはサンディー&ジュニオールのお父さんです。最近は沖縄のJ-POPグループ、BEGINと共演して話題になりました。

個人的には以前からヘジオナル(地域音楽)がブラジル音楽の真骨頂と思いますので、ここは念入りに。

グループ部門はフォホーのトリオ・ノルデスチーノ。前にも書きましたが、聴かせるフォホー流行の兆しです。

デュオ部門はガルヴァォン姉妹。こちらは結成70年記念盤。伝統的ムジカ・カイピーラです。セルタネージョ苦手という人はまずこのあたりから聴いてみると良いかと思います。

ヘジオナル部門アルバム大賞はモニカ・サルマーゾ。MPB感覚で聴けます!ちなみに女性歌手部門でも入賞していますね。あえて例えるなら都会的なムジカ・カイピーラ?この辺り、次回にでもまとめて紹介したいと思っています。

ヘジオナル男性歌手部門は先日紹介したメストリーニョが獲得しました!この作品は本当に要チェックです。惜しくも逃したVitoru Kinjo(ヴィトル・キンジョ)にも注目です。名前から想像できるように、彼はサンパウロ在住の日系人。デビュー作、しかもヘジオナル部門にノミネートということで業界からも注目されているようです。

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MPB部門のグループ賞はドリヴァル・カイミの作品集『Na Praia de Caymmi』で注目されたコーラス・グループのEquale(エクアーリ)。結成は90年代末と意外に古く、2000年にはジルベルト・ジル集、2004年にミルトン・ナシメント集をリリースしています。

MPBアルバム部門はシコ・ブアルキ。これは文句なしですが、ひとつ言わせてもらうなら収録時間が短すぎ!!
ちなみに授賞式にも代理出席したシコ・ブラウンは、シコ・ブアルキの孫。シコの娘とカルリーニョス・ブラウンの息子です!

インストルメンタル部門アルバム賞は11月に来日するYamandu Costa(ヤマンドゥ・コスタ)とAlessandro Penezzi(アレサンドロ・ペネッジ)の共作。ヤマンドゥはソロ部門でも受賞、現在最強のブラジル・ギター奏者ですね。アレサンドロも度々ヤマンドゥと共演しているこちらも超絶技巧奏者。彼の名前は覚えておくと良さそうです。

新人賞は日本盤も出たチン・ベルナンデス、前回紹介したペドロ・フランコを抑えてレシーフェからのアウメリオが受賞。そのルックスからはネイ・マトグロッソやフィリッピ・カットをイメージしますが、やはりXジェンダーだそう。これは2枚目の作品ですが、エルバ・ハマーリョやアルセウ・ヴァレンサといった北東部の大物ミュージシャンがバックアップしています。

最優秀楽曲部門からはノミネートした3曲全部がなんとシコ・ブアルキ。これは流石にどうかと思いますが(苦笑)。

特別企画アルバムは我らがヘナート・ブラス全面参加のテオ・ヂ・バホス楽曲集『タタナゲー』が獲得!!個人的には現在アコースティック系MPB最高峰のアーティストだと思います。

ポップ/ロック/レゲエ/ヒップホップ/ファンク部門、まあストリート系といったところ、これはまさかの再結成したノヴォス・バイアーノスが受賞!メンバー同士のトラブルで再結成は絶対にないと言われていただけにファンにはたまらないです!

と、ざっと個人的に目に留まったところを挙げてみました。ブラジル音楽はますます細分化して、どこからどう聴き進んで良いのか途方に暮れることもあるかと思いますが、こういったプレミオの受賞者の作品を聴き進んで行って自分の好きなアーティストやスタイルを見つけ出していくのもいいかもですね!

文責・Willie Whopper/編集・noriji

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