【W.W.のAgora Mesmo第3回】リオデジャネイロに新しい音楽ムーブメント誕生!?

【W.W.のAgora Mesmo第3回】リオデジャネイロに新しい音楽ムーブメント誕生!?

ライタープロフィール

Willie Whopper:Jornal Cordel初代編集長、現・顧問。ブラジル音楽愛好家。2006年東京・西荻窪にブラジル情報発信スペース「Aparecida」開店。2011年9月、第1回ブラジリアン・プレス・アワード音楽部門受賞。2011,13,14,17年に駐日ブラジル大使館で、18年にはブラジル・サンパウロでもブラジル音楽についての講演を行う。これまでブラジル音楽に関する著書を6冊出版。
サイト:Barzinho Aparecida

かつてはブラジル音楽の中心と言われた街、リオデジャネイロ

古くはショーロ、マシシ、サンバの時代から、1950年代末のボサノヴァを経て1990年代から2000年代にかけてはファンキ・カリオカやラパ系のサンバ・ノヴォが流行しました。

が、それ以降はどうもいまいちパッとしていなかったのも事実。

ブラジル音楽評論家のシャールス・ガルヴィンは「リオの音楽は終わった」とまで言い切ってました。

もちろん大物アーティストのライブやロック・イン・リオのような大規模イベントは開催されていますが、音楽のトレンドの流れではサンパウロやパラー州べレンに比べると盛り上がりは一歩欠けていたような気がします

foto: Catraca Livre

そんな状態が続いていたリオデジャネイロですが、ここにきて新しい音楽ムーブメント誕生の兆しがあります。

20代~30代の若手を中心としたアコースティック系シンガーソングライターの動きが活発になってきています。

ちなみにサンパウロではダニ・グルジェルを中心とするノヴォス・コンポジトーレスというムーブメントがありますが、リオの場合、自作曲ばかりでなくシコ・ブアルキやエドゥ・ロボ、カエターノ・ヴェローゾあたりのMPBスタンダードも新感覚でカヴァーするのが特徴です。

そういった意味ではMPBを聴いてきたブラジル音楽好きな日本人にも取っつきやすいと思います。それでは紹介していきましょう。

Luísa Lacerda/ルイザ・ラセルダ

Luisa Lacerda
foto: A Voz Da Serra

シーンの中心にいるのが女性シンガーのルイザ・ラセルダです。ルイザはリオデジャネイロで生まれたカリオカで、リオデジャネイロ連邦大学音楽科を卒業後、2013年よりプロ活動を始めました。

バール・セメンチやベコ・ダス・ガハーファス、カーザ・ド・ショーロといったライブハウス・会場に出演、SoundcloudやYouTubeに音源をUpすると注目を集めました。

エレクトリックなサウンドが主流となっている昨今、アコースティックな弾き語りが新鮮に受け止められたようです。

2017年にクラウド・ファンディングで資金を集めて、Miguel Rabello(ミゲル・ハベーロ/後述)と共作した初CD『Meia Volta』(メイア・ヴォルタ)を発表しました。

既に日本にも輸入販売されているので耳の早いブラジル音楽ファンならチェックされているかと思います。

ルイザはソロやギター奏者とのデュオで歌うことが多いですが、それとは別にLuísa Lacerda e Quarteto Geral(ルイザ・ラセルダ&クアルテート・ジェラウ)というユニットでも活動しており、こちらは北東部音楽の現代的解釈で注目、「現代のクアルテート・ノヴォ(かつてエルメート・パスコアールやアイルト・モレイラが所属していた伝説のグループ)」とも呼ばれています。

Sound Cloud:https://soundcloud.com/lu-sa-lacerda
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCaHcDYoF8IfCU5WsHM_d4rQ

Miguel Rabello/ミゲル・ハベーロ

そのルイザ・ラセルダの一番の伴奏者で、ルイザと共同名義でCDを発表(全ての曲を作曲!)、若手ギタリストの中でも注目度No.1といえるのがミゲル・ハベーロ

ミゲルは父がクリストヴァン・バストス、母がアメリア・ハベーロというサラブレッド。あの早世した天才ギタリストのハファエル・ハベーロの甥っ子にあたります。まだ23歳というから驚きです。

『メイア・ヴォルタ』の収録曲全てが彼の作曲で、歌詞はパウロ・セーザル・ピニェイロが付けており、パウロはミゲルを「新しい共作者」だと認めているほどです。

ミゲル・ハベーロYoutubeチャンネル

Pedro Franco/ペドロ・フランコ

foto: Divulgação

もう一人、要チェックなギタリスト、ペドロ・フランコ。ペドロはリオ・グランヂ・ド・スル州出身のガウショです。

12歳の時から演奏活動を始め、18歳の時にリオデジャネイロに移住、マルコ・ペレイラにその才能を認められました。

また同郷のヤマンドゥ・コスタに可愛がられ共演も度々しています。現在はマリア・ベターニアやゼリア・ドゥンカンのバックバンドの一員です。

またカヴァキーニョやバンドリン、ベースも弾くマルチプレーヤーでもあり、上記の『メイア・ヴォルタ』ではベースを弾いています。今年になって初リーダー作品『ペドロ・フランコ』を発表しました。まだ28歳、これからが楽しみです。

Angelica Duarte/アンジェリカ・ドゥアルチ

foto: Rock In Press

ルイザの妹分的存在なのがサンパウロ出身のアンジェリカ・ドゥアルチ。サンパウロの音大を卒業後リオに活動の拠点を移しました。

8月に初めてのEPをリリース予定、カエターノ・ヴェローゾのカヴァー集でタイトルは『オダーラ』になるそうです。こっそりですが、実はアンジェリカ、ペドロ・フランコの彼女です(笑)。

angelica duarte

アンジェリカ・ドゥアルチYouTubeチャンネルアンジェリカ・ドゥアルチSoundCloud

昨年エリザとアンジェリカが出演するショウに行ってきました!2人とも日本でも演奏したいと言ってました!

昨秋リリースしたシングル曲はこちら!

その他のリオの注目アーティストたち

と、こんな感じで、これからムーブメントの中心になると思われる4人を紹介しましたが、他にも大枠ではこの流れの輪の中にいるアーティストを一部紹介します。

既に2枚のCDをリリース、ちょっとお姉さん的存在のGabi Buarque(ガビ・ブアルキ)

昨年初CDを出したAlice Passos(アリシ・パッソス/ミゲル・ハベーロが参加)

キャリア20年超えのベテランですが彼らと共演も多い女性シンガーのIlessi(イレッシ)

クラッシックも演奏する男性ギタリストのVicente Paschoal(ヴィセンチ・パスコアル)

TVグローボのSom Brasilに出演して注目されたThiago Amud(チアゴ・アムヂ)

Thiago Amud

2018年の新譜『O Cinema Que O Sol Não Apaga』

バイオリン・トランペット奏者でエルメートの門下生でもあり、エルメートを招いて録音した初CD『プリメイラス・インプレッソエス(PRIMEIRAS IMPRESSÕES)』で注目されるCarol Panesi(カロル・パネジ)

ピアニストでこちらも初CD『アレグリア・ヂ・マトゥート(ALEGRIA DE MATUTO)』をリリースしたばかりのSalomão Soares(サロマォン・ソアレス)。彼はサンパウロ在住ですが、この人脈と深く関わっています。

今紹介したアーティストたちは、サンパウロのブレーノ・ルイスやマリオ・ジル、大御所のドリ・カイミ等と共演することも度々で、正統派MPBの復権の兆しといえるかもしれません。

実はこのムーブメント、まだ誕生したばかりでまだ名前が付いていません。そのうち現地メディアが適切な名前を付けると思うので、安直に新世代アーティストと呼ぶのはやめておこうと思います。あと1年ぐらい経ったら新しい音楽の潮流として世界から注目される?はず!です!

コルデルセレクト!Spotifyプレイリスト

文責・Willie Whopper/編集・noriji

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